はじめまして。私は現在20代の男性です。実は私はいわゆるゲイなのですが、高校生の時に「もしかしたら自分はゲイじゃないかもしれない。」と自分に言い聞かせて女性とお付き合いしたことがあります。
ゲイだと信じたくなかった
先ほども述べましたが、私はいわゆるゲイです。
自分がゲイだと自覚したのは中学2年の頃でした。
その頃は、自分が異端で異常だと自責の念でいっぱいでした。
でも、好きな男性はいるので、その狭間で苦しむ日々でした。
個人的には漫画に出てくるような淡い青春ラブストーリーに憧れていましたが、ゲイの自分には無理だと諦めていました。
そんな中高校入試で、私は地元の公立高校に進学することになります。
当時、普通になりたかった私は「もしかしたら、高校で新しい出会いがあって、普通に女性のことを恋愛対象にすることが出来るかもしれない・・・。」そんな淡い期待を持って入学します。
しかし、クラスメイトの中で一番ときめいたのは男の子の石田くん。
「やっぱり自分はゲイなのかな・・・。」と複雑な気持ちで迎えた入学式でした。
部活入部と先輩との出会い
高校入学してからしばらくして、私は中学時代からやっていた陸上を続けるために陸上部に入部します。
陸上部は部としても大事なのですが、もう1つが種目別としての繋がりです。
私は中距離チームに所属していました。
中距離チームの中には1人だけ2年の女子の先輩がいました。
それが、後の彼女になる中嶋先輩です。
第一印象は普通でした。
「唯一の2年女子の先輩かー」くらいです。
特別可愛いとか美人だとかそういうのではないし、陸上も早いわけではありませんでした。
というか、部活の練習が受験でなまった体には相当厳しくて、ゲイだストレートだ以前に頭の中に恋愛なんて考える余裕もありませんでした。
当時の中嶋先輩との思い出と言えば、マネージャーが残してくれた記録用紙を僕が受け取って中嶋先輩に渡してたくらいです。
ゲイだという噂が広まる
風向きが変わってきたのは、3年生の先輩が引退してしばらく経った夏ごろです。
これは後々、同期の女子から教えて貰ったのですが、中嶋先輩が「私のことが好きだ」というのが女子更衣室で話題沸騰になっていたそうです。
その話題がどこから漏れたのか知りませんが、一部男子部員にも知れ渡りました。
夏休み頃から同期の男子に「お前、アレらしいな笑」とからかわれるようになりました。
もちろんアレというのは先輩のことなのですが、当時、超がつく程鈍感だった私は、先輩が自分のことが好きだなんて全く気付いてなかったですし、からかわれていたのは、どこからか自分がゲイなのがバレてしまったのではないかと心配になっていました。
なので、先輩からするとただの鈍感な後輩だったのです。
告白
時は流れて2学期。
私の学校は多くの学校と同じように定期テスト1週間前は部活禁止です。
定期テスト前最後の部活終わり、私は先輩に3年生用の駐輪場に呼び出されました。
部活を引退した3年生はほとんど部活の時間まで残っていないのでこの時間はとても静かなんです。
ここでようやく、私は先輩の私に対する気持ちを察しました。
そして、先輩の口から、はっきりと告白の言葉を聞きました。
私の答えは「少し時間をください」でした。
自分はゲイだがストレートになりたい、そんなジレンマが私を苦しめました。
しかし、最終的に「もしかしたら、先輩のことを好きになれるかもしれない。」そう思ってしまった私は告白にYESと返したのでした。
ゲイだという悩みから・・・
こうして、先輩と私の恋人関係はスタートしました。
とは言っても恋人らしいことは全然出来ませんでした。
通学路は真逆なので登下校デートなんてありませんでしたし、この頃ちょうど先輩は大学受験に向けて塾に入ったのもあり放課後デートも無理。
そして、土日は部活なのでデートなんで無理。
そんな日々でした。
そんなある日、先輩の精神が不安定になります。
唐突に学校から消える、音信不通になるかと思ったら、数日後ケロっと帰ってくる。
その繰り返しでした。
その頃は、急に私の教室に女子の先輩が押しかけてきて「中嶋の事知らない?」と尋ねられることもしばしばありました。
ちなみに女子の先輩たちの間では「中嶋が病んだのは、彼氏の私がしっかりしていないからだ。」となっていたそうです。
別れ。
年末年始になると、先輩は少し落ち着きを取り戻します。
私は1月1日に届くように年賀状を出しました。
先輩も返信をくれたのですが、消印を見ると1月2日だったので後出しですね。
そして、先輩から年賀状が届いた翌日メールが届きます。
内容は・・・
「私の彼氏としての姿が思ってたのと違った。別れたい。」
そう、私はフラれました。
当時の私はゲイだと隠して中途半端なことをしてしまったと罪悪感でいっぱいでした。
後日談なのですが、先輩が高校卒業する際に便せん5枚分の手紙をくれました。
そこには「私には弟のような家族になってほしかった、でもなってくれなかった。」とありました。
これについてどう思うかは皆さんにお任せします。
ゲイという関係性
こうして、ゲイの私とN先輩の不思議な関係は幕を閉じました。
別れた後は普通の先輩後輩の関係に戻り、今でも、高校の部活のOBOG会で会って飲む仲です。
先日、中距離チームのメンバーで飲んだ際、「彼女はいないのー?」とか「結婚はいつまでにしたいのー?」と純粋な表情で尋ねてきたので、N先輩は高校生の時に、あなたが思ってもいないベクトルで私が苦しんでいたことを知らない、もしくは知っていてそっとしといてくれているのかもしれません。